例会報告 |
第75回「ノホホンの会」報告 2018年2月22日(木)午後3時~午後5時(会場:三鷹SOHOパイロットオフィス会議室、参加者:狸吉、致智望、山勘、恵比寿っさん、ジョンレノ・ホツマ、本屋学問) |
書 感 |
日本人の甘え/曽野綾子(新潮社 本体740円) 著者、曽野綾子は1931生まれ、因みに私は1936生まれであります。何が言いたいか。 曽野綾子の痛快極まりない文調は、私とほぼ同世で世情から受けた感情を共有している面があり、実に面白くて痛快である。更に、体験無くして語れない内容には、表現が生々しく、目を覆いたくなる心境にも至るのであります。 本書は、第1話から15話迄のエッセイ形態で書かれており、書感として全ての話を書く訳には行かず、多くの人に読んで貰いたい思いを本書感にて表現させて頂きます。 第1話 待機児童問題が内蔵するウソ 国と社会に対する認識の甘さ、贅沢過ぎる現代の夫婦、と言うことに付いて、猿でも守っている「親である条件」と手厳しい。 プロとは家の事情を超えて働ける者。このフレーズの切り口から自分の実体験を交えて、待機児童問題を提起し、待機児童を抱える人達の国への甘えに切り込んでいる。 自分は作家と言う虚業であるが、その世界は他人に知れない厳しさがあり、幼児を抱えての苦労話から始まる、その体験からくる問題提起は痛快そのものであり、エサを求める動物の雛を守るつがいの協同作業をみろと言う。 第2話 打算的処世術と権威主義の臭いがする、日本社会の体質変化と言う切り口。 代表される例として、大げさに過ぎるNHKの地震情報。まるで2.26事件が起きたときのようだと言って批判する。無難な問題を報道して時間潰し、働いている証を表現する柔い根性とさえ言っている。ユートピアとは「どこにもない場所と心得よ」と言うのが趣旨。 第3話 マスコミの「思いあがり、退化、幼児化」を憂うと言う切り口から。 マスコミは、すぐに「謝れ」と言いその様子が報道される。相手に謝る様に要求した国家や組織や人に真の大物がいたためしは無いと言う。謝っておけば済むと言う問題では無かろう。 著者の「アパレルヘイトを推奨した」と言ってもいないことを曲げて発言し、他社も追従した時のことに付いて、多くのマスコミが発言の取り消しと謝罪を要求した。人に謝れと言って謝らせて、あなた方は納得するのか、謝れば心から悪いと思ったと信じるのか。面倒だから謝っておいただけの芝居ごとを要求して、自分が哀れに思わないのだろうか、と手厳しい。 この部分に付いて、著者は自分の体験から得た結論に自信を持って、手厳しい反論をしている。読んでいて、誰も正面から議論を仕掛ける資格は無いし、自信も無い様子を覗い知ることができる。著者は、日本財団を通じて貧困地に自らおもむき、実際に救援活動などに参加し、国連難民高等弁務官に随行するなどの実体験を積んでいる。本書内にもその体験の事が記されおり、軟なマスコミ人など歯が立たない事は想像に難く無い。私などは、現地の様子を詳細に記された頁は、気持ちが悪くなってしまうほどであった。 本書は、以下全部で15話の切り口から日本人の甘え構造が論じられているが、以下をタイトルのみの記載とし、個々のコメントは省略させて貰う。 第4話 「理解」は人間の見事さではない…アラブ的思考を学ぶ アラブの思考は、キリスト社会と違うことを認識せよ。 第5話 人間が極限の生きる力を出し切る時…難民の現実的困難 何もしないより、一人でも救う意義、難民の抱える常識、行動力のパワー 第6話 痛みに耐えてあるく人々…「小さなパン3個」 自分の足に出来たまめで歩けなくなった事から、巡礼者の苦難が記され、現代社会の甘えにつなげている。 第7話 自らが選ぶ自由と可能性を贈る…医師が患者を治す意味 マダガスカルで奉仕活動をする遠藤能子さんや医師の黒木知明先生の活動から、日本で生活する日本人の甘さを論じている。 第8話 日本を許してあげて下さい…国家的対応の限界を知れ 第9話 目の前に立ちはだかる絶対の障壁…積乱雲に遭遇した記憶から 第10話 神は人生の全ての瞬間の立ち合い人…物事の基本を論じる 第11話 原則を守るためには適用も要る…物事の基本を論じる 第12話 過保護が身心の免疫力を失わせる…不潔と不純の恵み 戦争に負けたことで虚弱だった幼児の体質から抜け出した体験談 第13話 破壊的でなく、穏やかに個性を貫く…服装が語る過去と現在 醜悪で画一的なリクルート・スーツ 第14話 食事には餌の摂取以上の意味がある…会話とものを大切に 第15話 人間の全てのことは、いつか終焉が来る…人の世の理を説く (致知望 2018年2月1日) |
糖尿病は砂糖で治す!甘いものに目がないのは正しかった 糖の代謝こそが命の源 健康常識パラダイムシフトシリーズ/崎谷博征著(鉱脈社 2017年9月発行) 健康常識パラダイムシフトシリーズ崎谷博征著の3作目です。 著者は脳神経外科専門医で、ガンの研究で医学博士取得。現在、ロイヤルホリスティッククリニックで ガン、難病、原因不明の慢性病を対象にした治療を確立し、根本治療指導に従事、生活習慣の改善に よる自然治療、及び土壌からの健康改善の活動に力を注いでいる。と、あります。 ☆聞きなれないカタカナの医学用語や専門用語が多く難しく、用語の意味を知らずに各パーツの働きや 流れの説明を理解するのは困難。醗酵食品が醗酵するのに時間が必要なのと同じように理解するまで 時間がかった。 ☆参考文献272件は全て海外の資料で、国内の学説が遅れをとっているのか、国内の学説に真っ向か ら挑んでいるようで、この学説が明らかになったら困る筋の方や製造業者が圧力をかけているのかも知れ ないと思った次第。 ☆今の私には未消化の個所もあり、本書の内容が全て正しいとは確証できないものの著者が真相を明ら かにしていく熱意・勇気を称えたい。 ☆本書を読むにあたって、「プーファ」という言葉の意味を理解していないと前に進めないので、1作目の 「パーファ・フリーであなたはよみがえる」の説明部分を再提示した。 「プーファ(PUFA)とは、多価不飽和脂肪酸(Poly unsaturated fatty acid)の略で、穀物、豆類に含ま れている脂質成分であり、室温でも容易に酸化され、猛毒の「アルデヒド」を大量発生させる根源になりま す。キャノーラ油、オリーブ油、菜種油、サフラワー油、大豆油、コーン油、セサミオイル、亜麻仁油などに 代表される、植物の種を搾って化学薬品を使って分離した植物油脂(オメガ6系、リノール酸)のことを通 称クッキングオイルという名前で呼ばれており、プーファ(多価不飽和脂肪酸)ということになります。 「体調を壊している人は、この「プーファ」(=クッキングオイル)が酸化して発生するアルデヒド(劇薬)を 知らぬ間に体内に取り入れていますよ」という警告を発しています。(体内に入ると体温でも酸化してしま う)「プーファ」の出現が、人類にとって最大の惨事とまで著者は言っています。」 私は「プーファ」という言葉になじみがないため、著者が「プーファ」と言っている個所を「植物油脂」に 置き換えて読んでみた。 本書の結論 スイーツ≒砂糖 従来の認識は、「甘いもの」=「砂糖を使ったもの」で、「砂糖」が悪者。しかし、「お菓子、ケーキ、パン ケーキ、クッキーなどの砂糖を使った加工食品」の甘いもの(sugary)と「砂糖」とは違うものである。 これらの加工食品は、小麦などの穀物(デンプン質)に植物油脂が混じっており、砂糖のせいではなく、 デンプン質や植物油脂によるものである。 砂糖(あるいはショ糖、サクロース)≒糖(グルコース) 砂糖(サクロース)=糖(グルコース)+果糖(フルクトース) 糖尿病は砂糖(サクロース)で治るのであって、糖(グルコース)で治るのではない。 糖(グルコース)と果糖(フルクトース)のコンビネーションで、糖尿病で滞っている生命のエネルギー・フロ ーが再開通する。 糖尿病は慢性病の代表だが、ガンを含めたすべての慢性病は、細胞レベルで見ると糖尿病と同じ代 謝になっている。 エネルギー代謝というのは正確には「糖」のエネルギー代謝(糖の完全燃焼)のことを指します。 糖のエネルギー代謝(糖の完全燃焼)が、私たちの健やかな生命場(ヘルスィネス.フィールド: healthiness field)を形成・維持・発展していく本体です。 一方の病気の場(シックネス・フィールド:sickness field)のエネルギー代謝(病的エネルギー代謝)は 脂肪・タンパク質をエネルギー源としています。 糖の不完全燃焼を引き起こし、エネルギー・フローが完全に滞ってしまいます。 砂糖(サクロース)=糖(グルコース)と果糖(フルクトース)のコンビネーションは、生命体をシックネス・ フィールド(病気の場)からヘルスィネス・フィールド(健全な生命場)へと変換してくれる本質的な物質で す。 目次抜粋 第1章 驚きの発見!糖尿病の治療は砂糖であった、実例 第2章 糖の代謝が命の源 第3章 糖尿病の真実 第4章 高血糖は病気の原因なのか? 第5章 ”砂糖″の驚くべき波及効果 1 オーストラリアン・パラドックス-デンプン質+植物油脂=肥満!! 2 砂糖、果糖で痩せる 3 果糖・乳糖はエンドトキシン(内毒素)も抑える 4 砂糖は最大のストレス防御物質 5 砂糖がもたらす良眠と覚醒 6 果糖(フルクトース)の驚くべき効果 7 「糖尿病が砂糖で治る」メカニズム 8 砂糖、ハチミツの驚くべき治療効果 9 糖(グルコース)でも治療効果がある 10 糖尿病を治すための食事 3章 糖尿病の真実から なぜ糖が悪者になったのか? 1950年位迄は、病院でショックのときに備えてハチミツを手術室に常備していた。以降、化学合成され たコルチゾール(ステロイドホルモン)が登場し、ショックの治療に合成ステロイドに移行した。 同時期に、糖尿病薬(フェンホルミン、その後はメトホルミンなど)が開発され糖尿病の治療がインシュリン から糖尿薬へと置き換わります。この時期には「糖尿病は砂糖病だ」という激しいキャンペーンが繰り広げ られます。 同時期に「コレステロールが心臓血管症を引き起す」という悪質極まりないキャンペーンも始まっている。 そして、植物油脂がコレステロールを低下させ、さらには「植物油脂が必須脂肪酸」という洗脳が始まりま す。 更に「砂糖はコレステロール合成を高めるので、心臓血管病の原因だ」という奇妙なデマが、うまくオメ ガ6系の植物油脂の販売促進に利用されます。 つまり、「砂糖は悪い。植物油脂は体に良い」というデマです。このような根拠のないポピュラー・サイエ ンスの垂れ流しは、数十年後のメインストリームの現代医学に反映されるようになりました。 それ以降、何の音沙汰もなく、植物油脂がグローバルに販促され、その一方では砂糖を悪玉にするこ とで、糖尿病のさらなる販促が継続して行われて現在に至っている。 第5章“砂糖”の驚くべき波及効果から ①オーストラリアン・パラドックスという言葉があり、オーストラリアで1980~2003年に砂糖の消費と肥満の 調査で、砂糖の摂取量23%減、甘味料16%減、全人口で肥満は3倍であった。 「砂糖の摂取で太る」神話は崩れ、ピザ、ケーキ、クッキー、ポテトチップスなどの菓子類が増えていること がわかり、素材はデンプン質で問題はオメガ6系の植物油脂の含有量が多く、肥満の原因になってい た。 「小麦(デンプン質)+植物油脂」を砂糖に多く含まれている食べ物と思い込んでいることが落とし穴であ る。 ②果糖・乳糖はエンドトキシン(内毒素)も抑える エンドトキシン(内毒素)は腸内細菌の細胞壁の成分であり、ストレス下で血液中の濃度が増え、単独で 肥満、糖尿病を引き起す。 果糖(フルーツ)、乳糖(ミルク)はエンドトキシン(内毒素)を低下させる効果がある。 ③砂糖は最大のストレス防御物質 ストレスが高まると甘いものが食べたくなる。砂糖のストレス軽減効果が確かめられている。砂糖はストレス 反応で脳内に増えるコルチゾ-ルの合成をブロックする。コルチゾールは脳細胞を死滅させる作用があり、 実際に認知症の治療でコルチゾールを抑える医薬品の臨床試験が現在行われているが、砂糖に勝るも のはない。「砂糖中毒」の本質は砂糖がストレス反応を抑えること。 ④糖尿病の臓器障害の原因は血管からのリーク! 身体にストレスがかかると脂肪分解(リポリシス)が起き、血管からタンパク質や血漿がリーク(漏出)する。 著者は「リーキーベッセル」と呼んでおり、糖尿病の主徴候の一つにこの「リーキーベッセル」があり、糖尿 病性網膜症、糖尿病性腎症はいずれも血管からアルブミンなどのタンパク質や血漿が染み出ること、つ まり「リーキーベッセル」が原因です。 果糖(フルクトース)はこの血管のリークを抑える作用を持っている。実際に糖尿病と診断されている人 (プーファ過剰状態)は、果糖(フルクトース)が欠乏しています。 ⑤「糖尿病が「砂糖」で治る」メカニズム 「砂糖」(サクロース)は、ハチミツと同じく、「糖」(グルコース)と「果糖」(フルクトース)が50%ずつの二糖 類です。 「果糖」は、「砂糖」と比べても血糖安定作用、インシュリン反応性が穏やかです。 「砂糖」の糖尿病に対する治療効果は、「果糖」の効果が大きく、「糖」とのコンビネーションで相乗効果が あると考えています。 「砂糖」もPDH(ピルビン酸脱水素酵素)を活性化して「糖」の代謝を進めることが分かっています。 糖尿病はPDH(ピルビン酸脱水素酵素)が植物油脂や乳酸によってブロックされていることで、糖のエ ネルギー代謝フローが滞っている病態です。 その滞りを解消する物質が「果糖」(「果糖」を含んでいる「砂糖」)なのです。 PDH(ピルビン酸脱水素酵素)とは、糖のエネルギー代謝で形成されたピルビン酸はこの酵素によって ミトコンドリア内で本格的なエネルギー産生に使用される。糖が完全燃焼される。 ⑥糖尿病を治すための食事 デンプン質は、糖質摂取源としては推奨しない。 ・反応性低血糖を引き起こす(インシュリンの大量分泌) ・小腸をすり抜けて、小動脈を詰まらせる(パーソープション) ・エンドトキシン(内毒素)を増やし、肥満や炎症反応を引き起こす。 デンプン質の中の穀物、豆類は植物油脂を含むため、過量摂取はランドル効果(糖-脂質サイクル)に よって、糖の完全燃焼をブロック。 さらに、穀物、豆類は肉類と同じくリンとカルシウム比の値が高く(リンが多い)、ミネラルバランスがあま りよくない。リンの過剰摂取は、副甲状腺ホルモン(PTH)の放出を引き起こし、リポリシス(脂肪分解)で 体内に蓄積されている植物油脂(特にアルデヒドを発生させやすいオメガ3)を放出させる。 デンプン質で消化が悪く腸内発酵するものはエンドトキシン(内毒素)を増加させるために避けたほうが 良い。 デンプン質でエンドトキシン(内毒素)の面で安全なものは消化の良いもの(ただし、反応性低血糖の 問題がある)。 ちなみにセルロースを含む食材は腸内微生物が発酵できない(エサにできない)ので推奨。例えば、 生のニンジン、タケノコ、キノコ類といったものにセルロースは含まれている。これらはエンドトキシン(内毒 素)の発生を抑える。 デンプン質は基本的に糖(グルコース)のポリマーです。 果糖(フルーツ)が全くないのも糖質源としてはデメリットが大きい。 高フルクトース・コーンシロップ(HFCS)も砂糖と同じく、糖と果糖が1:1の割合で含まれるという触れ込 みだが、分析したところデンプン質が含まれていた。過量摂取するとデンプン質の負の側面が出てくる。 理想の糖質源は、果糖(フルクトース)か、果糖が入っている二糖類です。食材でいえば、砂糖(ショ 糖)、ハチミツ、フルーツ、フルーツのピューレ、アガベシロップなどです。 シンガポールなどの東南アジアではサトウキビを搾ったショ糖液が、最高のエネルギー代謝改善食とい える。 タンバク質・脂質では エネルギー代謝以外に体の構造・機能維持のために、タンパク質・脂質の摂取も欠かせません。 タンパク質は、ストレス反応を起こさないアミノ酸が豊富に含まれている食材を推奨しています。グリシ ン、プロリンといったアミノ酸は、炎症やストレス反応を抑えてエネルギー代謝を高め、糖尿病の治癒作用 があります。 食材としては動物の筋肉部分ではなく、グリシン、プロリンのアミノ酸が豊富に含まれるゼラチン質(コラ ーゲン)やガラスープを推奨しています。 その他、卵黄、貝柱、牡蠣、乳製品(生乳、ヤングヨーグルト、チーズなど)、さつまいもなどはアミノ酸 組成がよいため推奨しています。 動物の筋肉部位はエネルギー代謝を低下させるアミノ酸(トリプトファン、メチオニンなど)が含まれてい るので、過剰摂取は血糖コントロールが悪くなります。 脂質は植物油脂(オメガ&6)を避けることにつきますが、脂肪の摂取は食事を美味しく食べるためにも 欠かせません。脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収にも必要です。 良質な糖質、タンパク質に加えてバター、ココナッツオイル、牛脂などの飽和脂肪酸を足すと糖の吸収 も遅くなり、急激な血糖上昇やストレス反応を引き起こすことがなくなります。ちなみに余剰の糖、果糖は、 細胞内で飽和脂肪酸であるパルミチン酸に変換されます。 パルミチン酸は、ストレス反応で放出されるコルチゾールの合成を抑え、心身をストレスから守る保護ス テロイド(プレグレノロン、DHEA)を増加させる効果があります。 飽和脂肪酸を豊富に含む食材では、ココナッツオイル、バター、反芻動物(牛、鹿、羊)の脂肪分、卵 (黄身)、乳製品、チョコレート(植物油脂を含まず、ダークではないもの)を推奨しています。これらの食 材はストレスから守ってくれるコレステロールも含んでいますので糖尿病にも効果的です。 (ジョンレノ・ホツマ 2018年2月15日) |
「小池劇場」が日本を亡ぼす/有本香(幻冬舎 2017年6月10日第1刷発行 本体1,300円) 1962年、奈良市で生まれ西伊豆で育つ。東京外国語大学を卒業後、旅行雑誌編集長、上場企業の広報担当を経て独立。 世界中を取材し、雑誌、テレビ、ラジオ、インターネットメディアなどで発信している。 国際関係、民族問題に関する取材経験が豊富。近年は国内政治の取材にも注力している。 著書に『なぜ中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社新書)、『中国の「日本買収」計画』(WAC)、共著に『リベラルの中国認識が日本を亡ぼす』(産経新聞出版)などがある。 はじめに 小池劇場の始まり 石原慎太郎という敵 メディアが共犯者 小池百合子という政治家 築地市場の不都合な真実 東京を取り戻せ あとがき 小池さん、貴女に期待してたんですよ、私は。貴女は日本で初の女性首相になる人だな、と。その夢を見事に破ってくれて寂しい思いをしています。 一市民の気持ち(期待)は見事に裏切られましたが、これ(政治に裏切られること)は初めてのことではないので、そんなに深刻には考えていませんが…(笑)。そうです、一度目は民主党政権でした。その時の衆院選挙では民主党に投票しました。今回の都知事選では、まさか貴女が同じ程度の政権担当能力しかないとは考えが及ばなかったからです。即ち、先ず都知事の職務を全うし、次いで国政へ戻り、安倍首相にもできない行政改革や政治改革を旗印に政権を狙うと思っていましたよ。 都知事選では「都政はブラックボックス」と言って情報公開がなされていない密室政治や利権に関わる不明朗な現状について批判したから、都民は皆さん貴女に1票を投じたのではないでしょうか。 ところが何時まで経ってもブラックボックスだと言っていても前には進まないんですよね。知事の立場としてはそれをホワイトボックス?にするのが仕事じゃないでしょうか。それに、衆院選に党首として采配を振ったわけですが、あまりにもひどかったのと違いますか。「排除」という言葉は私も必要なことだと思いますが、余りに有頂天な言い方でもありましたね。 ―――なんて考えていたら、本書の存在を知ったので飛びつきました。政治に造詣の深い皆様は、こんな本を読まなくても、政治家小池百合子に対して的確な評価をなさっていると思います。 すでに、五輪の動脈(環状2号)は建設が間に合わない。後先考えずに鮮魚市場の移転を延期した小池は今までに多くの関係者が苦労を重ねてきた大事業を一瞬にしてぶち壊した。 ビジョンも知見も、ルールに基づく行政上の手続きもなく、学ぶ謙虚さもなくて、信念のかけらもない。 ないない尽くしの都知事が、ただパフォーマンスにいそしむ中でどんどん東京が壊されていく。←あとがきより 小泉劇場には郵政民有化の構造改革という演目があり、橋下には大阪都構想があったが、小池にはそれがない。ぶっ壊すといっても小泉や橋下には正規の行政上の手続きがあったが、市場の延期は議会に諮ることなく鶴の一声での独断。 そして、事実に基づくロジックがないことだ。豊洲の安全性については何も問題は見つかっておらず、入札等についても不正は何も見つかっていない。透明化を掲げてはいるが自分にとって都合の悪いことは公表しないという二重基準。ご都合主義の自分ファーストだ。ただ、騒がしく他人を叩くだけのワイドショー政治。ゴシップではなく、小池劇場現象を検証することで、今の日本に巣食う病理を明らかにする試み。←まえがきより (恵比寿っさん 2018年2月10日) |
空白の航跡─「裁かれる空」の記録/松永憲生(講談社 1980年4月 定価1,200円) 航空事故をはじめ鉄道、自動車事故、医療事故などの原因調査と真相究明には、科学的、工学的にきわめて高度な専門知識と分析力、そして経験が必要とされる。しかし、その裁判となると、法律には詳しくても基本的に文科系の知識しかなく、この分野では素人に等しい司法関係者たちが果たして本当に合理的な判断を下すことができるのか。 自然現象やメカニズムが複雑に絡み合い、科学的に立証することが簡単ではない事象を、人間以外かかわらない汚職や詐欺と同じように司法が公正に裁けるのか、本書は、その本質的かつ究極のテーマを問うた異色のドキュメントである。 1969年10月20日、鹿児島空港を離陸して宮崎空港に向かった全日空YS-11型機104便が午後2時7分頃、強い風雨のなか着陸を試みたが、風の影響もあってか接地が遅れ、滑走路に溜まった雨水によって車輪がロックする、いわゆる「ハイドロプレーニング現象」も加わって、機体はオーバーランして滑走路前方の川の堤防に激突して機首は大破、川を跨ぐようにして停止した。 幸いにして死者は出なかったが、乗客49人、乗員4人合わせて53人のうち、機長、副操縦士を含む43人が負傷し、そのうち重症者8人という当時としては大きな航空事故になった。副操縦士も一時は記憶喪失になるほどの大怪我をした。31歳の機長は自衛隊を経て全日空のパイロットになったが、飛行時間3600時間のうちYS機長になって19日目、同機の飛行時間は58時間だった。その飛行経験の短さが、その後の捜査や裁判で検察官や裁判官らに予断を与えたことは否めない。結果的には機長だけが操縦ミスで起訴され、検察側の主張どおり禁固1年、執行猶予3年という厳しい有罪判決を受けることになった。 判決文で裁判長は、機長は当然注意すべき雨によるハイドロプレーニングの認識を欠いていたこと、YS-11機のようなプロペラ機の場合、このとき機長が採用したフラップ角度20°に対して、宮崎空港では基本的にフラップ角度35°で着陸すべきことを有罪の論拠にした。裁判官は、高度で複雑な航空機の操縦も車の道路交通法と同じレベルで順守すべきと断定したのである。 一方、多くのパイロットや航空専門家は証言台で、ハイドロプレーニング現象でもブレーキは効くこと、フラップ角度は状況によってパイロットの判断で使い分けるものであり、機長が採用した20°も正常操作の1つで、必ずしも危険だったとは考えられないことなどを証言した。さらに、当時はあまり知られていなかったが、「ウィンドシア」という高度によって風向きや風速が変化するやっかいな空気流の影響もあった。 欧米では、よほどの重過失でなければ一般的にパイロットが起訴されることはない。罰則では過失を防止できないという理由からだ。しかし、日本では一般社会の後進性ゆえか業務上過失を捜査機関が厳しく取り調べ、裁判でも有罪になりやすい。単純なマスコミはこの判決を妥当なものと評価したが、日本に乗り入れている航空各社のなかには、日本で事故を起こしたら大変なことになると路線廃止を真剣に検討したところもあったそうだ。 本書で著者は、禁固刑は強姦罪と同じ刑罰だ。結果的に乗客に被害を与えてしまったが、悪条件のなかで乗客の安全を第一に必死で操縦桿を操作した人間に負わせるべきものではないと書いている。さらに、宮崎空港は元々沼地で、滑走路に水が溜まりやすいという土木構造的な欠陥、ひいては国の行政の不備を裁判官は指摘しておらず、ハイドロプレーニング現象を起こすほど滑走路に水が溜まった状態で着陸を許可した管制官の責任など、多くの点で事実認定を誤っているとも指摘する。 裁判官が誤った判決を出しても裁かれることはない。だから、法律が裁判官の独立を保障しているように、パイロットにも操縦で主体的な独自の判断が保障されるべきだ。極限の状況でパイロットがフラップ角度20°を選んだのであれば、それが正しかったのではないか。本書はこのように結んでいる。 三河島列車衝突事故を扱った「空白の五分間」、全日空727型機の羽田沖事故をテーマにした「最後の30秒」など、鉄道事故や航空事故に関する出色のドキュメントが他にもあるが、専門家や捜査当局による事故報告書、さらに裁判結果が常に正しいと信じてしまう一般社会やマスコミの考えに一石を投じるという意味では、十分にその役目を果たしている。 なお、滑走路に細かい溝を切り、水捌けを良くして摩擦係数を増加させて停止しやすくする「グルービング」は、今では全国の空港で一般的であるが、宮崎空港のこの事故がきっかけともいわれている。 (本屋学問 2018年2月20日) |
エッセイ |
米国首席戦略官の解任 昨年の暮れ12月に「影の米国大統領」と言われていた首席戦略官のバノン氏が、運営する「ブライトバード・ニュース・ネットワーク」の東京本部が設立された。その設立に向けて、バノン氏の講演会が開かれ、そこではバノン氏の野心だけが述べられたと言われる。その講演会に関わるレポートが、早稲田大学の研究員である渡瀬佑哉氏のプレジント誌への起草記事から転用した。 この「ブライトバード・ニュース・ネットワーク」は、米国の白人至上主義者や極右思想を持つ「オルト・ライト」または「ナショナリスト」と言ったトランプ大統領を熱狂的に支持する層を読者に持ち、米国の既得権者とされる政府関係者、主要メディア、ハリウッド関係者らのバッシング記事を並べたて、自らの政治的主張に敵対する諸勢力に舌鋒鋭い批判を展開し続けているグループである。その設立講演会でのバノン氏の弁舌は、15~20分程で終わってしまい。内容は、NHKなどの日本のメディアに対し「フェイクニュース」と名指しで批判することで終わってしまい、会見時間の大半を浪費し、得られる内容は皆無であったと言 う。 バノン氏が首席戦略官のポストから更迭されたことからも理解が出来ることだが、氏の政策がトランフ氏との間で絶対的な信頼関係があったとは言えないとのこと。 もともと共和党は、小さな政府を求め自由貿易、自由市場を肯定する強固な思想信条をもっているもので、それは民主党の政策に近いものであつたとも言える。バノン氏は、共和党の新参外様であり、主流派とは相入れないものが有った事から、トランプ氏がバノン風の保護主義的な政策を述べる姿に共和党員は快く思っておらず、オフレコでの場では不平不満を口にしていたと言う。だからバノン氏は伝統的共和党保守派内の結束を乱す結果となり、更迭されたと言うのが事実のようだ。 結果として、「オルト・ライト」の政策遂行能力、影響力は皆無となった。バノン氏とトランプ氏の個人的親交が、たとえ継続されても政策に影響を与え何かが決まるとは考えられない状況に至り、政権内には既にオルト・ライトをかばう勢力は皆無と言う 今後のトランプ政権は、伝統的共和党のスタイルに回帰して行くであろうと言うのが渡瀬裕哉の論調である。私は、選挙を控えた今の時期であるから、トランプ氏は一次的に変身したと考えるが、それは無いだろうと言うのが渡瀬氏の論調である。 (致智望 2018年1月13日) |
高齢者の転倒事故 「年寄りが転ぶと骨折して寝たきりになるよ」とは、耳にタコができるくらい聞かされてきたが、そのような災難がわが身に降りかかるとは思ってもみなかった。以下、ご参考までに私が体験した事故の経緯を報告する。 昨年11月3日、文化の日の夕方、自宅近くの急な坂を自転車で上っていた。ところが脚の力が足りず、よろめいて転んでしまった。 いつもなら痛みで済むところだが、今日の痛みは様子が違う。自転車に掴まって立とうとするが立上れない。「これは只事ではない」とようやく気付き、携帯電話で家内に状況を知らせた。 そうこうする間に物音に気付いた近所の人が、救急車を呼んでくれた。すぐにその場で「左大腿骨骨折」との診断が下り、近くの総合病院に搬送される。それから先は地獄の苦しみ、大腿骨の上端が砕けているので、身体を持ち上げられると激痛が走る。事故の起きた日が3連休の初日なので医師の手配がつかず、4日も待たされ5日目にやっと人工股関節設置の手術を受けた。 手術後すぐ歩行訓練のリハビリが始まった。すぐに始めないと筋力が衰え、寝たきりになるそうだ。車椅子でリハビリルームに行き、マッサージや起立練習など20分程度行う。足は痛いが手術前の激痛に比べれば物の数ではない。週3回のリハビリを半月終える頃には、よちよち歩きだが歩行器に掴まって前に進めるようになった。 総合病院のリハビリでは限界があるので、術後半月でリハビリ専門の病院に転院した。こちらは専門だけあって、連日3時間みっちり歩行訓練がある。スクワット、後歩き、階段上り下りなど、内容もかなり厳しい。年末年始もいつも通りの厳しい訓練。そのお陰か半月余りで杖無しで歩けるようになった。そこまで回復すると一日も早く自宅に帰りたい。連日退院を要望し、1月中旬にやっと自宅に戻った。事故以来二ヵ月半ぶりの我が家である! 自宅で食事をし、トイレに行き、ベッドで寝る、こんな日常の生活が如何に有難いか、今回の事故で骨身に沁みた。自宅に戻っても、リハビリは訪問と通所併せて週6日続けているが、用のある日は休めるので気が楽だ。 兼好法師の「死は、前よりしも来らず。かねて 後に迫れり」を思い出し、「老いは見える形で来るのではない。気が付けばもう後に迫っている」ことに気が付いた。 今回の転倒事故は「もう終わりが近いよ」と死神に肩を叩かれたようなもの。次に来るのは二度目の転倒か、心筋梗塞か、はたまたくも膜下出血か? いずれにしても、さして遠くない未来にあの世が待っていること気が付いた。「さすれば、この世にある限り一日一日を大切に生きよう」という殊勝な気持ちが沸いてきた。こんな目に遭わなければ、死ぬまでぼんやり過ごしていたことだろう。これだけが今回の転倒事故のプラス面か。 (狸吉 2018年2月12日) |